ノーマン・ドイジ「脳はいかに治癒をもたらすか」を読む-2

二人目のケースはポール・マドール氏。トマティス博士に師事し、カナダ、アメリカにリスニングトレーニングを広めた偉い先生です。

ポール・マドール
1949年フランス南部生まれ学習障害。
話を聴こうとすると常に相手に言い直してもらわなければならなかった。
識字障害と診断。読字に弱さ。
空間認識能力と注意力欠損。肥満。
18才で落第4回、高校中退。
ポールはリスニングテストを受けた。検査結果を見、歩きながら様々な面からインテイクを行う。トマティス博士の声が彼に自信を与えた。
診断「忌々しい小さい障害: 失読症、内向性、かんしゃく、不安、ぎこちなさ、不眠症、未来に対する怖れ」。そしてそれに対する自己理解が行われた。
「トマティス博士は自分に語りかけてくれた最初の人物。」by ポール。
トレーニングに母の声を使用、それによる言語理解の始まり。
ポールの聴く音は全て鈍っていたため、発する声は不明瞭なつぶやきになり、聴覚脳マップの差異化がしっかりしていなかった。
ポールは左利き耳だった⇒音信号は左耳から右半球をへてさらに脳の中央部を横切って左半球に到達、最大0.4秒の遅れ。
他者の発話をリアルタイムで処理する能力を低下させ、さらに自分の思考を言葉にしようとするのに時間がかかるので、思考の流れを失う傾向。
左利き耳は発達中の脳に混乱を来たし、一見すると超確とは無関係に思われる学習障害や口ごもり、吃音を誘発する(一部の左利きに限り、そうではないことは証明されている)。
ミックスドミナンス(左右混在)だと、右手と左手に対応する脳領域の差異化が出来ず、各々の手で異なる作業を同時に実行する能力を欠く。
ミックスドミナンスは、全体的な動作がぎこちなくなり、筆跡が乱れ、文字を読む時に目でうまく追えない(左から右へ、上から下へ、整然と文字を追えない)。
ポールの聴きそびれ=低周波音を聴きすぎて高周波音を十分に聴き取れないこと。
ポールの問題1、筋緊張低下からくる姿勢の悪さ、ぎこちなさ、きびきび歩くことへの嫌悪があった。
ポールの問題2、左利き耳ー右耳と関連する聴覚皮質は高い周波数帯域を処理する=右利き耳は言語音を明確に処理できるようにする。

そんな彼がどう変化したのか。続きはまた書きます。