私のところでトレーニングを受けた子ではないのですが、小学校の時から時々様子を聴かせてもらっている子がいます。

小学校時代、彼はクラスメイトを台の上から突き飛ばして骨折させたり、傘でクラスメイトを刺してけがをさせて笑っていたり、と派手な行動が目立ちました。
ご両親は「男の子なんだから、お互い様よね」と言い放ち、周囲を震撼とさせたものでした。

勉強はできるので、中学受験して大学まである附属中学に合格し、今年大学3年生になりました。
グループワークなどでは多分周囲が大変だったであろうと想像はできますが、勉強面では問題なくこの9年間過ごしていたようです。ですのでご両親も「うちの息子は普通」と思って過ごしていたようです。

大学3年。就活の季節です。

ご両親が「うちの子は普通」と思っていたので、彼はソーシャルスキルトレーニングも受けませんでした。コミュニケーションについて教えてもらったり、対人関係でうまく行かない時にどうしたらいいのかと考えることもないままに大きくなったと思います。

就活で何をどうすればいいか全くわからない彼を見て、ご両親、少なくともママは「うちの子は普通の就職ができないかもしれない」と気がつきました。

それでも、気がついた時がチャンスです。
自分の子供に障害があるかもしれないということを認めるのはとても勇気のいることです。
まして、グレーゾーンだったり、コミュニケーションの問題だけだったりすると、「勉強はできるから」とか「人付き合いは嫌いなタイプ」とか「理系だから」などの言葉で直面せずに大きくなるまで来ることは、学歴変調教育の日本ではそんなに珍しくないのかもしれません。
子供の間はそれでも生きていけます。
大人になった時、一人で社会に出る時。
親も子も、本人の強みと弱みを認識して、弱いところを足すのか、強いところを生かすのか、それにはどんな方法と場所があるのか、探し始めるのも、家族と本人の成長です。

みんな、自分らしく生きてニコニコしていられる社会になりますように。