第2ゾーンは中周波です。ここに対して人類の聴覚は一番感度良く働くようにできています。良く聞こえるから言語に使うのか、言語に使っているうちに感度が上がったのか、どちらが先だったかはわかりませんが、ここを主に使用して私たちは日々言葉を使ってコミュニケーションを取っています。
中周波以上の音を聴こうとするとき、私たちはウサギのように耳をピンとそばだてています。人間の外側の耳はウサギのようには動きませんが、耳の中では鼓膜をピンと張る筋肉が働いて、より良く中周波以上の音をキャッチできるように設定を変えています。見えていないから知らないのですが、耳はいつもそんな風に(寝ている時にも)働いているのです。
ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)のポージェス先生は「抑揚に富み調子の変化に富んだ人の歌声」が自閉スペクトラム症の子供達のコミュニケーションの扉を開く、と介入の研究を行なっています(津田真人「ポリヴェーガル理論」を読む からだ・こころ・社会 星和書店p165)が、トマティスの研究もよくなさっているポージェス先生ですので、この(1)「第2ゾーン以上がコミュニケーションには必要であること、(2)耳をきちんとそばだてないと言語は聴こえにくいこと、を踏まえてのアプローチをなさっているのだと思います。
トマティスでは第1ゾーンが整ってから第2ゾーンにアプローチします。
この時、自分の声をマイクとトマティスのヘッドホンを通して聴く、というトレーニングも加わります。それは今までの聞き方とは全く違う、という子もいれば、全然今までと変わらない、という子もいます。けれど、言語のキャッチの方法が急にクリアーになる子が多く出て来ます。
先日LD学会でポスター発表して来た「聴覚・発声訓練による聞く力向上 フォーブレイン®︎を使用した発声トレーニング前後の比較」では、17人の未就学児から中学生に、この中周波以上に焦点を当てやすくしながら自分の声を骨導で聞くフォーブレイン®︎を一ヶ月使用してもらい、前後でどんな変化が出るかを調べました。
結果は、相当な子たちの聴くこと・話すこと・コミュニケーションなどの改善が、保護者からも本人も実感としても感じられた、ということになり、やはり「聞こえていても、この中周波=人の声あたりに集中する力が弱いことから苦労している子達がいるのだ」と実感を持ちました。
トマティス博士の研究では「聴こえていない音は話せない」というのが第1理論です。
いくら言葉を教えても、聴こえていない、すなわち音が入って来づらいか、入って来ていても処理できていないなら、理解はできませんし繰り返しもできません。
この大切な中周波のトレーニングがトマティスでは第2ステップに入って来ます。