「できないこと」をどう考えるか

Pちゃんは22歳の女性で、知的とASDで障害者手帳取得済です。彼女のママからの相談です。
「Pは筋力もすごく弱くて色々できないんですけど、この前グーに握るのができないと発見。指を折ることはできても、ちゃんとグーに握れないんです。お医者さんに相談したんですが、『短期のリハビリとかは提供できますが、それでできるようになるかなあ』と言われてどうすればいいのかと」とのこと。

そんなことできてないとは思わなかった、指先で物をつまむとかはできるのに、こんな落とし穴があったとは、としょんぼりのPちゃんママ。

さてどう考えればいいのか、一緒に考えましょう。

まず完全なグーを握れないことでどんな不都合があるか、と考えます。

握力はかなり低いと思いますが、物が持てないほどではないですね? ちゃんと作業所でお仕事もできていると聴いています。

できないことをさせようとせずに回避の方向で良い、と考えられるなら、「物を持つ時はしっかり持とうね」「落とさないように気をつけてね」と伝えて、周囲は重いものなど持たせない方向にシフトすれば生活は回っていくと思います。

今度は逆から考えましょう、グーを握れないことでどんな不都合があるでしょう。

手先指先からの刺激が限定的だと言うことから脳への刺激不足にならないか、と考えられます。手をぎゅっと握ることは力を入れるとか踏ん張るとか全身に力を入れるときにも連動して起きる運動なので、全身の連動にもつながりそうです。手をぎゅっと握る運動で血圧が下がると言うデータも見たことがあります。動かせない部分があって運動嫌いだと、どんどん体を動かすことから遠ざかって、全身の循環器に悪影響が出てしまう可能性も見過ごせませんね。

何かをちょっとはさせた方が長期的にはいいのかも、と思うのであれば、本人が楽しめる物を探しましょう。今更腕相撲や指相撲、ジャンケン、手遊び、握力トレーニングに楽しさを見出すのは大人の女性ですし難しいかもしれませんね。おうちにNintendoスイッチがあるならリングフィットアドベンチャーはどうでしょう? あれだと握る、押す、引くなど、結構腕と手の運動になります。

大事なのは、「やらせなくちゃ」と保護者が強く思い過ぎて彼女の義務を増やすことにならないように、と言う事です。運動もともと好きじゃないんですから三日坊主でいいんです、今週は雑巾しぼり、今週はうどん作り、今週は窓拭きなど、家事で毎週三日坊主を新しく取り入れる、そんな感じでどうでしょう? 食べ物作りは達成感も満足感も大きいのでオススメですよ。