夏に多いのが「来年小学校なので、就学時検診までに」「入学前に聞く力を」と言うトレーニングのご希望。
就学時検診というのは、10月頃、住んでいる場所が学区である公立小学校からのお誘いで実施される、その学区の子たちの簡単な健康診断と発達チェックのことです。
もう随分前のうちの息子の時は、お誘いのあった小学校に行くと6年生のお姉さんお兄さんたちが出迎えてくれ、親と切り離されて連れていかれちゃいました。なので何をしたのか息子に聞いた情報でしかありませんが、視力・聴力検査、簡単な会話と知能検査あたりであったようでした。通常級での学校生活に問題はないかというチェックですね、見えてるか聞こえてるか話は聞けるか指示に従えるか理解できるか。
この時に、母子分離ができない、指示に従えない、理解できない、視力聴力に弱さがありそう、などがあると、教育委員会から「ちょっとご相談」と声掛けがあることもあるようです。
さて、小学校について少し書きましょう。
小学校には①通常級、②通常級補助員付き、③特別支援教室または通級指導学級、④特別支援学級、⑤特別支援学校、と実はいろいろあります。
①の通常級は、多くの保護者の皆さんが思う普通の小学校。35人くらいの生徒に先生一人または二人のクラスです。
②のように通常級で補助の先生をつけてもらうことが可能な自治体もあります。ちょっとだけ注意の問題を抱えていたり衝動性が強かったり聞く力が弱い子に、補助の先生とは言いますが教員ではなく、自治体の研修などを受けた支援教育に関心のある元保護者の方などが、教室で個別に横について、授業の進み方に応じて次に何をすれば良いかなど手伝ったりささやいたりしてあげる、そんなシステムです。この補助の先生が足りない、またはシステムそのものがない自治体だと、保護者に「毎日学校に来て欲しい」と言われてしまうこともあり、働く母には苦しい状況になります。
③の特別支援教室または通級指導学級は、普通級に在籍している子で、注意の問題を抱えていたり聞く力が弱い子など集団授業で学びにくさのある子、衝動性が強かったりコミュニケーションが弱いなど発達の問題から集団授業参加が難しい子、感覚過敏や不安の高さまたは登校しぶりなどメンタルの問題から集団参加が難しい子たちが対象です。
情緒級という名前がついている場合もありますが、発達のコミュニケーショントラブル対応とトレーニングのクラスと思っていいでしょう。
難聴、言語障害の子どもたちの学級もここに入ることが多くなりました。
個別取り出しまたはグループ取り出しで、弱い部分の補完を目的に支援に詳しい教員と、週1時間からもう少し長く、またはもう少し回数多く、学ぶシステムです(あすなろ教室など可愛い名前が付いていることが多いです)。現在大変人気で、人数制限があって軽度の子がなかなか入れなかった、人数が増えたため次の年に継続できなかった、ということも聞かれます。
ギフティッドの子たちもこのシステムを利用して、学校で一息つく時間を確保していることもあります。
④の特別支援学級は少人数の固定級で、子どもはこちらに在籍し、じっくりゆっくり本人の成長と理解のスピードに合わせて学びます。知的障害を持つ子、肢体不自由の子がメインになってきました。通常級とは「交流」という形で、一緒にできそうな授業だけ混ざって学ぶことがあります。
以前は一度ここに入ったら通常級に戻れないと言われることもあったため、勧められると保護者の不安が高まりますが、自治体によってはここで固定ではなく、しっかり本人に合った学びで成長して通常級に戻すことを目的としている、と聞こえるようになってきました。教育委員会としっかり相談し、選ぶ前も、在籍していても、年に数回成長の様子を共有し、状況を擦り合わせていくことはとても大事だと思います。
⑤特別支援学校は、ここまでの①から④では学べないだろう、と思われる子どもたちのためにある学校です。自治体が持っている聴覚障害、視覚障害、知的障害、肢体不自由児、病弱児、強い発達障害を持つ子など、現在「障害がある」とされる子たちはここに通うことになります。一般の小学校みたいに各地にたくさんあるわけではないため、スクールバスのある学校が多いです。障がいのある子どもに、幼稚園、小学校、中学校、高校に準ずる教育を施す、と調べると出てくるように、この学校で18歳まで過ごした場合、高校卒業資格は得られません。けれど大学受験資格は得られる、と書かれており、ルールは流動的と言えるかもしれません。
何を基準に選ぶかといえば、その子が無理のないペースで安心安全に学べる環境といえます。
けれど「グレーゾーンでは」「軽度自閉スペクトラムで」「ADHDで衝動性が高くて」「知的についていけないかも」など、問題が微妙なお子さんの場合、①から④までのチョイスがあることになるため、入学前の一年間は相当悩む方がほとんどです。
また、繊細で不安の高いこの子には少人数で手厚い特別支援学級が良いと選んだ場合でも、集まったメンバー次第であることは否定できません。同級生や先輩に物凄い暴れん坊や大声で話し続ける子やいじめてくる子がいた場合、安心安全な環境とはいえなくなってしまうため、大変悩ましいことになります。
とりあえず選ぶ基準として私がよく聞くのは「家から近い」「保育園(幼稚園)で一緒だった子達が多い/きょうだいが通っている」「面接したくれた先生が良い人だった」というのがベスト3です。何かあってもすぐ対応できる場所、子供のことを知っててわかってくれる子のいる場所、指導者が理解ある様子を持っていること、これは親にとっても安心安全を感じられる要素です。
都度都度相談しながら学校を変えて行った子たちも見ました。親の負担は相当ですが、いらっしゃる先生の力量や学校の雰囲気も年々変化するものです。
親子ともに我慢しすぎることなく、上手に環境である学校とやりとりしながら、本人が楽しく過ごせそうなところを探してください。