自分のこどもが幸せに育ってほしい、という部分はほとんどの親が持っている気持ちだと思いますが、では大人になるまでに何を持たせればいいのか、今の時代の親としては本当に悩むテーマだと思います。
「勝ち抜く力」という親もいるし、「思いやりや優しさ」「正直さ」という親もいます。
「オリジナリティ」を求める親もいれば「集団内できちんとやっていける力」を求める親もいます。
日本はそれなりに集団性の高い国です。日本の中で、日本の教育を受けることは、日本の大人になる上では大切なことです。そこにある不文律、語られていないけれどみんなが知って守っているルール、その存在への感度を上げていくことは、長い教育の中で語られずに学ばされていくことだからです。
先日会社の人事で働いている臨床心理大学院時代の友人と話しました。テーマは会社で周囲が困る人たちについて。
会社も集団で仕事をこなします。「これをやってね」と上司が部下に仕事を手渡した時に、「だいたいこんな風に」と渡した上司は思っています。
部下にそれが伝わらないと、いちいち「これはこの資料と同じ形式でやってね」など解説を付け加える必要が出てきます。
もちろん初めての依頼だったら、部下に対してその解説は付けて依頼されます。
何回かそうやって指示や解説をつけて渡した仕事をしていってもらう中で、「だいたいこんな感じでやるんだな」と大枠の認知ができてくる、ちょっとわからない時には「これは前回と同じ形式でやればいいですか?」と確認してくれる、この辺りができる部下が「成長している」と感じられる。
けれど、いろいろな部下が来るわけです、と友人。
何回言っても指示や解説を全く無視して独自の成果を出してくる部下の場合、本人は「僕にしかできない仕事をしました」と自信満々だったりするので大変です。相手の意図を汲む力の弱さを感じますが本人はそこに気がついていないので、こうじゃなくてさ、と指示の出し直しをすると臍を曲げてしまいます。「〇〇さんは分かってない」みたいな受け取り方になっちゃうわけですね。
この職場にはどれくらいの集団性の強さがあって、与えられた仕事はどこまで枠にそって作るべきなのか、という不文律の読み取り=認知や理解、そして相手に合わせて考える力、が甘いままで社会に出ると、周囲も本人も大変。
一体どんな育てられ方をしてここにこの歳でたどり着いたのか。
私の意見としては、それなりに勉強ができるのでできない部分が見落とされていた子かなと。
発達の問題に原因を探す今の時代に子供だったら、発達障害だ、とかASDだ、とか思われちゃうかもしれない、もともと他人の意図を汲むことが苦手だった、自分で答えを考えることはできても他人の意見と擦り合わせられない、威張ることはできるけれど仲良くすることが難しかった、他者関係を勝ち負けに落とし込んじゃって、「勝たなくちゃ」という思考の子。
そんな子が親や学習塾から「他人のことより自分のことを優先させて、常に勝ちなさい」って言われて育つと、こんな感じになるのかも、と考えてみました。正解は特になく、そんな可能性もあるかもしれないね、というだけですが。
馬には乗ってみよ、人には沿うてみよ、って言葉をもっと会社で使ってもいいのかもしれないなあ、と思った6月でした。