メールでお問い合わせ頂いた方から「トマティスでは母の声をトレーニングで使うことがあると読んだのですが」と質問されました。とてもよく調べてくださっているなあ、と感動しました。
かつてトマティスの聴覚トレーニングでは、トレーニング可能なほとんどの方に「胎内回帰」のプログラムを組んでいました。一度ママのお腹の中にいた時と同じ(または近い)状態に耳を戻し、そこから新しく新鮮で整った聴き方の状態を手に入れて誕生する、そういうプログラムです。
子供のトレーニングではこの胎内回帰の時にママの声を素材として使い、本当に音声的な疑似胎内にしばらく置き、そこから再誕生させていました。

私は今でも良いトレーニングだと思っていて、必要な時は使うようにしています。
特に日本の子育ては、ママたちへの責任のかかり方がとても独特で重たいと、自分も子どもを育ててみて感じました。子どもがかなり大きくなるまで、他者に迷惑をかけるとそれはママの責任になってしまうのが現状です。発達やコミュニケーションの問題を抱える子どもたちとそのママたちのヘトヘトを同時に聴覚トレーニングで癒し、さらに母子の関係を繋ぎ直し、イキイキした各々の人生を歩けるようにして行く、それはとてもステキなトレーニングです。

ママの声を使って効果の出る人たちと出ない人たちがあることは研究で解っています。90年代後半から臨床心理と脳科学のプロたちがトマティスメソッドに関わり解析をし始めたからです。
脳科学の教授は「母の声で生まれ直す、という、美しいファンタジー」と呼びます。脳科学の人らしい言葉だと思います。
臨床心理の教授は「母の声は、不安障害の子、自閉圏の子、愛着障害の子には必要だが、養子の子 、 ADHD/ADDの子、 緘黙症の子、 LDの子には必要ではなく、母の声を追体験するよりも、外界と自分をしっかり繋ぐことの方が効果的です」と2016年のトマティス国際会議で聴かせてくださったので、私も必要が本当にある子たちにだけ使っています。

ママの声を使わなくても、トレーニングを同時に受けるとお互いの聴覚が同じように整って来ますし、声も変化しますので、チーム感・一体感がものすごく上がります。お互いに相手の言う事を聴きたい、私の話を聴いてもらいたい、そんな感じになり、仲良くなって行った家族がとてもたくさんいらっしゃいます。
全ての子どもに必要ではありませんが、一部の子どもとママたちにはとても大切なトレーニングになること、それは本当です。