今年に入ってからギフテッド(天才児)をお持ちの保護者の方から問い合わせが増えました。「天才」ってなんでしょう? 少しまとめてみましょう。

英語でギフテッドと呼ばれるのは「天から才能を与えられた」と言うニュアンスだと思います。genius(ジニアス)もtalented(タレンテッド)も天才と言う単語ですが、日本ではギフトと言う単語の方がイメージしやすかったからか、ギフテッドが主に使用されています。様々なジャンルにギフテッドやジニアスがいますが、ここでは主に知的なジャンルでのギフテッドを扱います。

知的なギフテッドは小さい頃から「頭いいね」と言われて育ちますが、はっきりそうであるとわかるのは、心理検査(知能検査)を受けることによってです。現在日本ではほとんどの場合wisc-IV(ウィスク4、以下ウィスク)と言う心理検査(知能検査)が使われます。ウィスクは日本国内の同じ年齢集団の中で(つまり同じ教育を受けている状態の人々の中で)どれくらいの能力を持っているかが調べられます。FSIQ(全検査IQ)130以上は、同年齢集団中2.2パーセントしかいませんので、知的に非常に高いとされます。アメリカではFSIQ125以上、と言う数値がよく使われるようです。

一方ギフテッドの子たちは得意不得意がかなり強く、「FSIQは参考値に過ぎない」と所見に書かれることも多々あります。そうなると「うちの子ギフテッドなの?」とか「こんなにできないことがあるのに天才なの?」など保護者の方は感じられることと思います。

「wisc-IVによる心理アセスメント」と言う本には、「ギフテッドは概念に基づいた検査の得点が高いが、処理速度の関係した検査は健常児に比べて特に得点が高いわけではない。高知能とは優れた概念能力のあることであり、必ずしも優れた処理速度を示さない場合もある。またこれはギフテッドが急いで答えを出すよりも優れた答えを正確に出すことにより関心を持っていることを反映している可能性もある。」と書かれています。
考える、説明する、知識を繋げる、などを概念化とすれば、手で書く、単純作業を早くこなすなどが処理速度。頭の回転が速過ぎて、手先がついていかない子たちもたくさんいると世界的に理解されています。ですので、wiscの結果のVCI(言語理解)とPRI(知覚推理)の得点を見て判断されることもあるようです。

同年齢集団よりも優れた概念能力、言語理解、知覚推理を持つ子供たちに、小学校の授業を受けさせるのは、高校生に小学校の授業を受けさせるようなものです。まず、彼らは退屈です。なかなか授業が先に進みませんし、もっと先まで考えたいと思っても「それは来年習うことね」などと制限されてしまいます。そして彼らにとって同年齢集団の理解の低さはカオスです。理論で説明しようとしても「うるせー」とか言われたり、力で押し切られたりしちゃいます。飛び級のない国に育つギフテッドにとって、世界は理不尽。

ではどうしたらいいのか。

まず彼らの知的好奇心を満たす場所を確保すべきです。勉強で言えば年齢に関係なくどんどん先に進ませてくれるシステムのあるところ、お稽古事で言えば子供を小さい大人扱いしてくれるようなところ。レゴの教室、ロボットの教室、プログラミングの教室などに行くと、ギフテッドだろうと思われる子がたくさんいます。英検、漢検、算数検定、その他検定試験などにチャレンジしている子もたくさんいます。囲碁、将棋、チェス、習字など年齢問わずに頭を使うことに進む子もいます。
小中学生で自分の好きなジャンルの大学教授に直接連絡してお話を聞いて自分の研究を進めているギフテッドの子たちも来たことがあります。大学の先生たちは面白がってくれることもありますので、特定の専門的知識がぐんぐん伸びる子たちにはそう言う方法もあります。東大先端研の異才発掘プロジェクトROCKETはいつも満員御礼です。一般社団法人ダヴィンチ⭐︎マスターズさんも、小学生相手に楽しそうなことを企画してくれています。
当然、少し早くから大人と付き合うことになる可能性が高いので、保護者はギフテッドの子たちを「もう大人」扱いして、大人らしい会話のマナーなど教えてあげてもいいでしょう。

体と気持ちを置き去りにしないように気をつけてあげること。
好きなことに集中すると寝食を忘れがちなのがギフテッドです。その思考は体がないと存在できないのだから体も大事にすること、気持ちを置き去りにすると他人の気持ちに対してもセンサーが働きにくくなるので自分の気持ちも大事にすること、そのために睡眠と栄養や、リラックスや、ボディーワークも(嫌いかもしれませんが)少しはやって行くようにすることが必要かと考えます。
感覚過敏、聴覚過敏、耳鳴りを持っている子も多いようです。体を休めることだけでも、過敏は少し緩和します。
特に最近はデジダルにかなりハマっているギフテッドが多いですから、デジタルデトックスで海、山など自然の中に連れ出してあげてください。