トマティスの聴覚トレーニングの目的は、本来あるべき聴覚の働きを整えることです。

聴覚過敏の子たちも本来自然に行われるはずの「聴覚情報処理」がうまくいっていません。
他の子は平気な音の刺激が必要以上に大きく感じられる、大きな音を聞き続けていることで疲れてしまう、特定の嫌な音(または声)がありそれが聞こえると落ち着かなくなる、その子によって悩みは様々。

聴覚過敏が原因でAPD(聴覚情報処理障害)やLiD(聞き取り困難症)を起こしている子もいます。音を聞くのはしんどい、さらに聞き取ろうとする力も弱い。こうなると、この子は大丈夫?など心配されてしまいます。WISCなどでも聞き落としが多かったり室外の物音に気を取られたりするので注意力に問題ありなど書かれてしまうこともあるでしょう。

この聴覚過敏に対してはメンタルも大きく影響してしまいます。
またうるさかったらどうしよう、きっとうるさくて疲れちゃう、やだな、そんな気分から教室に入れなくなっている子もたくさんいるようです。ちょっとした意地悪を言う子がいたら、もう教室は最悪です。嫌なこと言われたくない、傷つきたくない、自分を守るための不登校の子の中に聴覚過敏の子は結構いるのではないかと思っています。

聴覚過敏に対してはイヤマフまたはノイズキャンセリングヘッドホンというのが今の日本では定番です。それは聴覚過敏を緩和するためのトレーニングがないことになっているからです。緩和できないなら音を小さくして守る、まあそうなります。

しかし、イヤマフは気導音だけを小さくするので、骨導音の聴覚過敏を起こしてしまっている子にはあまり効果がないのではないかと思います。本来身体中の骨も音を拾っているのですから、そっちは防御できません。ノイズキャンセルヘッドホンの高性能なものだと、周囲の音に対して逆層の音をぶつけて感知される音を消すという高度なことをしているため、私が使ってみた感じだと「突然ガラスケースの中に入れられたような世界の遠さ音の小ささ」がありましたが、これに慣れてしまうと今度は普通の音に対して慣れていくことがもっと難しくなりそうで、子供に使うのには注意が必要だと感じます。

聴覚過敏と言われる子/人たちは、元々の聴覚の働きを失っているとトマティスメソッドは考えます。
だから、本人が嫌にならないペースで(実はここ大事です)聞く力を再開発します。

聴覚過敏の子たちの身体は大抵緊張しています。
いつどこから嫌な音大きな音がするだろうと身構えている状態、交感神経優位な状態、神経を尖らせている状態です。姿勢は猫背気味で防御の姿勢、その結果呼吸は浅く、肩には力が入り、鼓膜張筋(鼓膜を張って音に焦点を当てる筋肉)が過活動を起こして周囲の音に常に耳をそばだててしまっています。
鼓膜張筋をゆるめてあぶみ骨筋を働かせ、あまり音に焦点を当てない時間を(多くの当たり前に聞いている人たちの耳がやっているように)作り出す必要があるのです。

この働きを、トマティスメソッドでは独自開発されたヘッドホンと音楽を使用して人工的に作り出します。

同時に気持ちのケアも大事にします。
音がすること=苦痛、という認知ループを緩めていきます。
呼吸を整え、楽しいことをやりながら楽しい気持ちで音を聞く体験を増やします。
食物アレルギーの子たちがほんの微量ずつアレルゲンを体に取り入れて減感作していくように、聴覚トレーニングは音の減感作をしていきます。
聴覚過敏の子たちは、長い時間のトレーニングができない(耐えられない)ことがほとんどです。ですので、本人が嫌にならないペース、受け入れられるペース、聴覚情報処理に慣れていくペースを守ってトレーニングすることがとても大事です。

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