GIFTEDギフテッドは、IQ130以上の人たち、とカンタンに定義しましょう。高い能力がある分、日本の集団教育、特に低年齢の教育では取り残されていることが多いです。「できるんだから、待っててちょうだい「分かってるんなら、騒がないで」「答えちゃわないで、みんなが考えているんだから」…、そんな言葉で傷つけられて、すっかり学校嫌いになる子も出ます。

落ちこぼれている子を救う事に対しては、ずいぶん手が増えて来ました。けれどこれら出来ちゃう子たち、吹きこぼれている子たちに対して、学校教育はほとんど手をかけてくれません。出来ているんだから良いでしょう。学校は集団の場なので特別扱いは出来ません。色々やりたいなら学外でどうぞ。そんな扱いを受けている親子が多いと思います。

私の所にやって来た小さい時から賢い子たちのお話しを少しします。

Kちゃんは2才で「ママ、わたしピアノをならいたいの」と言ったそうです。ママは先生を探しレッスンが始まりました。そのことを保育園で話したら他のママたちから「2才でそんなにちゃんと話せるはずない」「ママが作ってるんじゃないの?」「英才教育? 教育ママ?」と盛大にバッシングを受けたそうです。平均値から越えた子たち、特に言語が早かった子たちは、理解も会話も早いので、同じ年齢集団でのお勉強では全く知的好奇心を満たせません。小学校の途中で、「学校でやることは全部知ってることばかり。教室で私はただ時間が過ぎるのを待つだけ」と言いましたと、私のセンターにご相談に来られ、彼女の知的好奇心を満たせる様なアイテムと書籍と聴覚トレーニングをご提供。最終的にご両親はインターナショナルスクールを選び、転校しました。毎日英語での勉強は、さすがに最初は大変そうでしたが、日々英語力も成長し、知的好奇心は満たされ、意見をハッキリ言うことやもっと知りたがることを厭わない先生たちに囲まれ、楽しい学校生活を送っています。転校前後でIQを調べた所143でした。

Sくんは小さい頃から友だちの群れには入らず、先生を含め大人ばかりと話すタイプの子どもでした。幼稚園では常に「もっとおともだちと遊ぶよう励ましています」と書かれていたそうです。小学校に入り、学校の授業が面白くないとのことで来所。聴覚過敏も持ち合わせていたため、聴覚トレーニングをしながら本人が喜んで読む書籍や、レゴなどの立体組み立てパズルを静かで邪魔されない空間で取り組む時間を過ごし、リラックスしていきました。「小学校の勉強って、先生の持ってる正解を当てることですよね」と完全に学校内では勉強が物足りないため、英語の教室とロボットの教室に通い、知的好奇心の部分を満たして育ちました。高校生になった今でも「頭にプラグを差し込んでパソコンと直結して考えていることをどんどん出したい」と言う程考える力は強い様ですが、学校内では友だちもできて楽しくやれているとのことです。IQ140。

Nくんは、保育園時代からカワイイ笑顔と大人顔負けの鋭い観察力と褒められて育ちましたが、同級生からイジメにあってしまいました。小学校もその子と同じクラスで毎日心身に暴力があり、ついには不登校になり、来所します。不安が高く、興味は様々な方向に広がりますが集中力が1分と続かず、ノートを取るのも苦痛。調べたら聴覚過敏もありました。学校を休んでいるのを幸いとしばらく通ってもらい、トレーニングをしながら不安を軽減すること、彼の本来持っているであろう集中の時間を楽しいことで延ばすことを中心の時間を持つうちに、本人らしさはずいぶん取り戻せて来ました。IQは132。「イジメる子が親との関係で大変なのは分かるけど、僕がその被害に合う必要はないと思うし、彼は治らないと思う。同じクラスには戻る気にはならないと」言う本人の判断で転校。お山の分校みたいな場所で、少しのびのびして来たそうです。

この3人は、とにかく早い時期に大人と同じくらいの言語理解力と思考力を身につけてしまっています。ギフテッドの子たちには、問題点としていくつかのことが出て来ます。

(1)学校の授業がつまらない。

(2)先生に理解してもらえない。

(3)いじめられやすい。

そして(4)理解と思考に比べて手作業などが不器用。当然ですね、体は物理的な年齢相当のものですから。頭でここまで精度を上げたものが作りたいと思っても、手元がなかなかおぼつかず、ストレスが高くなる子もいるようです。実際ここに上げた3人も、作り上げたいものは大人レベルの物ですので、出来上がりに不満だったり作りたくなくなったりしてふてくされているのをよく見ました。

私の話をしましょう。小学校低学年で既に父親の本棚から適当に読めそうな小説を引っぱり出して読み、学校の勉強に新鮮みを覚えたことはありませんでしたが、授業で聴いたことはそのまま記憶し忘れませんので国語算数理科社会はほぼ満点。体育は大の苦手。授業は受けるのが面倒だからと仮病を使って適当に休みながら過ごしていました。4年の途中で縁あって吉祥寺にある明星学園と言う実に自由な学校に転校。ここの授業は常に自分で考え意見を発表し、論議し、確かめ、そしてそれを自分の言葉でまとめていく、と言う、大学のような授業であったので、私の知的好奇心は満たされ、勉強面では問題ない形で高校まで育ちました。勉強がどれほど出来ても変な妬みや悪口を聞かずに済む環境は快適でした。そしてICUと言うアメリカ半分のような大学、大学院、それから色々あって現職ですが、会社に就職したことは実は一度もありません。

つい最近IQを調べてもらったら143ありました。調べて下さった先生が「大変だったでしょう?」ととても深刻に訊いて下さって、「ああ、多くのギフテッドの子たちは大変な思いをして育っていき、おそらく大人になっても大変は続くのだ」とその時初めて深く理解しました。

そんなこともあって、メンタルケアと知的好奇心を満たせるような、ギフテッドの子たちのための塾も開こうかなあ、と考えているところです。