秋から冬にかけては就学相談の季節。
来年度小学校にあがる子たちは、教育委員会と保護者間で意見を出し合い、その子に一番良い教育環境はどこなのかと考えます。
小学校に入ってからも、来年度の教育体制をどうするかの相談があることも増えました。

自治体によっていろいろ違いますが、在籍普通級で支援員なし、支援員あり、通級あり、の3段階(通級も週1時間からもっとたくさんまで色々)。在籍支援級(支援級がない小中学校もありますので、その場合は転校になることもあります)で、普通級との交流あり。それから特別支援校(自治体内にたくさんあるわけではないので、バスでの通学になる場合が多いです)。
とこれくらいのバリエーションがあります。

保護者は学校側から会議を設定されたり、どれくらいの能力があるのかWISCを受けてもらいたい、と言われたりすることもあります。
学校側の意向が保護者の希望と食い違うことももちろん多いのですが、バトルになってもいいことはないので、上手に保護者の意見が通るように作戦を練ることは大事です。
最終決定権はもちろん保護者にあるのですが、やはり子供を預ける側が嫌々だとあまりいいこともありません。

さて、そんな時に受ける(受けさせられる)WISC。
これはおそらく国際的にも今一番使われている、認知機能を年齢的平均と比べてIQとして出す心理検査です。
これにも功罪はあると私は考えます。

よく練られた検査ですしその子の認知機能を正確に測るようにデザインはされています。
ですが、その子の状態によっては当たり前ですがペストパフォーマンスを正確に測れないと、検査者として常々感じているのです。

まず、新しい場面が苦手な子、ハイリーセンシティブな子は、当然緊張から数値が低めに出ます。
聴く力が弱い子、集中の持続時間が短い子も数値は上がりません。
想像力が豊かな子たちも求められるものとは違うということで数値が下がります。
不安が高い子たちだと「答えが合ってるかどうか教えてもらえない」ということでどんどん不安が上がっていく場合もあります。
私のところに多い聴覚過敏の子たちだと、室外の物音などに邪魔されたり心乱されたりしてしまうので、もったいない結果になることも多いです。

これで出したIQと日頃の観察だけで「普通級は無理でしょうから来年度は」と宣告されることに、保護者が納得いくこともあれば、納得できないこともあるのは当然かと思います。
私もそう思います。そのIQがその子のベストパフォーマンスでない可能性もあるからです。「IQは一生変わらない、と言い切られた」という言葉も耳にしたことがあります。
ベストパフォーマンスであればそれは正しい言葉です(そういう検査なのです)。
けれど阻害要因があるなら、それを取り除いた時にIQは変化する可能性があります。

本来もう少し多くの心理検査、例えば感覚過敏に関する物や聴く力をあまり使わないタイプのIQ検査、書く力聴く力の検査、または自尊心や鬱っぽさを測る質問紙を加えてテストバッテリーを組み、その子の状態をもっとよく知った上で判断できるようになるといいなあと思って、必要な子には聴覚トレーニングを行う公認心理師として学校宛に意見書を書くこともあります。
もっと多くの学校関係者の皆さんに「WISCの抱える限界」も知ってもらいたいと思いつつ、今年も頑張ります。